レンタル農園の区画を借りると、渡されるのは「四角い地面」だけです。プランターのように培養土を買ってくれば始まる、というわけにはいきません。この記事では、畑の土作りを、土の見方から草と石の片付け、耕す深さ、石灰・堆肥・元肥の順番と間隔、畝の立て方、必要な道具まで、実際にやる順番どおりに並べていきます。検索するときは「土作り 畑」と打つ人も多いはずですが、やることは同じです。
みのりまずは何も植えずに、土を触るところから。



借りた畑はね、前の人が作った土なのよ。良くも悪くも。一年は様子を見るつもりで付き合いなさい。
借りた区画の土を見る|固さ・色・水はけ・前の人の作物
道具を振り下ろす前に、土を見ます。見るといっても難しい話ではなく、握って、掘って、しゃがんで眺めるだけです。ここで分かったことが、このあと入れる資材の量を決めます。
まず、湿った土をひと握りして軽く握ります。ほろりと崩れる土は扱いやすい状態です。粘土のように固まって形が残るなら粘土質が強く、水はけの改善に手間がかかります。逆に指の間からさらさら落ちるなら砂質で、水も肥料も抜けやすい土です。
次に、移植ごて(小さいスコップ)を20cmほど刺してみます。すっと入るか、途中で跳ね返されるかで、耕された履歴が分かります。表面5cmだけ軟らかくて、その下が板のように固い区画は珍しくありません。色も手がかりで、黒っぽく湿り気のある土は有機物が入ってきた土、赤茶色や白っぽい土は有機物が少ない土です。
水はけは、雨の翌日に見るのがいちばん早いです。区画のどこかに水たまりが残っていたら、そこが低い場所です。畝の向きと高さは、この水たまりの位置で決まります。
最後に、前に何が植わっていたかを管理者に聞いておきます。支柱の穴やマルチの残骸、残った株から見当がつくこともあります。ナスやトマトが植わっていた区画に、翌年またナス科を植えると生育が落ちることがあるためです。
土の固さ・色・水のたまる場所・前作の4点をメモしてから作業に入る


最初にやること|草を取り、石とゴミを出し、深く耕す
土を見たら、片付けです。順番を守るだけで、あとの作業がずいぶん楽になります。
地上部を刈るだけでは、スギナやハマスゲのように地下茎で戻ってくる草に勝てません。草丈が高ければ先に刈って、そのあと鍬やスコップで根ごと起こします。抜いた草は区画の外へ。種を持った草を土に鋤き込むと、翌月に一面から芽が出ます。
掘り返すと、こぶし大の石、前の人の支柱の折れ端、黒いマルチの切れ端、結束バンドが出てきます。とくにマルチの断片は土に残り続けるので、見つけたら拾います。根菜を作るつもりなら、石は小指の先くらいのものまで取り除いておきます。
鍬またはスコップで、土を起こして砕きます。目標は深さ20〜30cm。根菜を作る区画は30cm欲しいところです。一度に全部やろうとせず、1m四方ずつ区切って進めると息が続きます。
掘り返した塊を、数日から1週間ほど日に当てておきます。土が乾いて崩れやすくなり、土の中で越冬していた虫やさなぎが減ります。
耕すときの注意がひとつあります。雨上がりのぬれた土を耕すと、土の粒がつぶれて固く締まります。握って水がにじむ日はやめて、表面が乾いて色が薄くなるまで待ちます。
この最初の1回は、正直しんどいです。100平方メートル近い区画だと半日仕事で、翌日は腕が上がりません。区画を借りた初日に全部終わらせようとせず、2〜3回に分けて通う前提で考えておくと続きます。


石灰・堆肥・元肥の順番と間隔
耕して土がほぐれたら、資材を入れます。ここは順番と待ち時間が決まっています。
日本の畑は雨が多く、土が酸性に傾きやすい環境です。多くの野菜が育ちやすいのはpH6.0〜6.5あたりで、ここから外れると根が養分を吸いにくくなります。そこで先に石灰をまいて酸度を調整し、そのあとで堆肥と肥料を入れます。
苦土石灰の量は、pHを1上げるのに1平方メートルあたり100〜200gが目安です。実際には手元の土の酸度が分からないことが多いので、初回は100g前後(両手で軽くすくって2杯ほど)から始めて、翌年以降に様子を見て増減します。石灰は袋によって成分と推奨量が違うので、必ず袋の表示を先に読んでください。苦土石灰・消石灰・有機石灰の違いと使い分けは苦土石灰の使い方の記事にまとめています。
石灰をまいたら1〜2週間あける
(上の見出しの続きです)石灰と、窒素を含む肥料や鶏ふん堆肥を同時に混ぜると、化学反応でアンモニアが発生して窒素が空気中へ逃げ、根を傷めることもあります。石灰をまいて土になじませてから、堆肥と元肥に移ります。
石灰と肥料・鶏ふんを同じ日に混ぜ込まない。最低でも1週間、できれば2週間あける
堆肥は、土をふかふかにして水もちと水はけを両立させるための資材です。落ち葉やバークなど植物由来の堆肥は1平方メートルあたり2〜5kg、牛ふん堆肥のような動物由来のものは0.5〜1kgが目安になります。動物由来のほうが肥料成分が濃いぶん、量は控えめです。堆肥の種類と自作については堆肥の作り方の記事をどうぞ。
元肥(もとごえ)は、植え付け前にあらかじめ入れておく肥料です。化成肥料なら8-8-8のような数字が書かれたものを、袋の表示にある量で入れます。多くの野菜で1平方メートルあたり100〜150g前後の指定になっていますが、製品ごとに違うので表示が正本です。
| 順番 | 入れるもの | 1平方メートルの目安 | 次の作業まで |
|---|---|---|---|
| 1 | 苦土石灰 | 100〜200g | 1〜2週間 |
| 2 | 堆肥(植物性) | 2〜5kg | 1週間 |
| 2 | 堆肥(牛ふんなど) | 0.5〜1kg | 1週間 |
| 3 | 元肥(化成肥料) | 袋の表示に従う | 植え付けへ |
逆算すると、植え付けたい日の3〜4週間前には石灰をまき終えている必要があります。4月末にナスの苗を植えたいなら、4月の頭に一度畑へ行く計算です。ここを忘れると、苗を買った日に石灰をまくことになり、また2週間待つはめになります。


畝の立て方|高さ・幅、向きは水はけで決める
畝(うね)は、野菜を植えるために細長く盛り上げた土の山です。盛り上げることで根のまわりの水はけがよくなり、土が深くなって根が張れます。歩く場所(通路)と植える場所を分ける役割もあり、通路だけを踏むようにすれば、大事な部分の土を固めずにすみます。
幅は60〜70cmが扱いやすい寸法です。両側から手が届き、2列植えもできます。高さは水はけしだいで、普通の土なら10〜15cm、雨のあとに水が残るような区画や、サトイモ以外の根菜を作るなら20〜30cmまで高くします。逆に砂質で乾きやすい土なら、低め、あるいは平らなままでもかまいません。
向きは南北が基本です。東西に長くすると、背の高い野菜が北側の株に影を落とし続けます。南北に並べれば、午前は東から、午後は西から日が回るので、影が偏りにくくなります。ただし、区画が傾いている場合は水はけが優先です。水は低いほうへ流れるので、傾斜に沿って畝を立てて、水が通路を流れていくようにします。
立て方は単純で、通路にする部分の土をレーキや鍬で畝側へ寄せ、上面を平らにならします。上が丸いと雨が両側へ流れ落ちて、株元に水が届きません。畝の上面は平ら、これだけ守れば形はいびつでも育ちます。通路は30〜40cm確保しておくと、収穫かごを置いてもしゃがめます。
最初に立てた畝は、たいていゆがみます。ひもを張らずに目分量でやると、端に行くほど細くなっていきます。気になるなら、支柱を2本刺してひもを張るだけで、まっすぐになります。
道具|鍬・スコップ・レーキ、借りられるか確認する
買う前に、まず農園の管理者に「道具の貸し出しはありますか」と聞いてください。レンタル農園には、鍬やスコップ、一輪車、じょうろを共用で置いているところがかなりあります。サポート付きの農園なら、道具だけでなく苗や資材まで料金に含まれている場合もあります。手ぶらで通えるなら、それがいちばん安上がりです。
貸し出しがない、あるいは数が足りずに順番待ちになるなら、最低限そろえるのは3つです。土を起こして砕く鍬(平鍬)、深く掘る・株を起こす剣先スコップ、表面をならして石を集めるレーキ。この3つで土作りはひととおり回ります。移植ごてとじょうろは植え付け以降に必要になります。
柄の長さは体格に合わせます。身長に対して短すぎる柄の鍬は、腰を深く曲げることになって、翌日に響きます。店で握ってみて、まっすぐ立ったまま刃が地面に届くものを選びます。品目ごとの選び方は家庭菜園の道具リストにまとめました。
道具は「借りられるか確認 → 足りないものだけ買う」の順。最初に一式そろえる必要はありません
2年目からの土作り|前作の片付けと連作の回避
一度作った畑は、2年目以降ぐっと楽になります。初回のような大がかりな石拾いは要らず、やることは片付けと調整に変わります。
まず、前作の残りを引き上げます。トマトやキュウリの株、支柱、マルチ、防虫ネット。病気が出た株や、うどんこ病で白くなった葉は、土に鋤き込まずに区画の外へ出します。病原菌や害虫の卵が土に残り、翌年の発生源になるためです。健康な葉や根は、細かくして鋤き込んでも問題ありません。
そのうえで、次に何を植えるかを決めます。同じ場所に同じ科の野菜を続けて植えると、生育が落ちたり病気が出やすくなったりします。これが連作障害です。ナス・トマト・ピーマン・ジャガイモはすべてナス科、キャベツ・ブロッコリー・ダイコン・コマツナはアブラナ科と、見た目が違っても同じ科ということがよくあります。区画を2〜4ブロックに分けて、年ごとに科を回していくのがいちばん確実です。組み合わせ方は輪作の記事で扱っています。
石灰は毎回まく必要はありません。毎年同じ量を入れ続けると、今度はアルカリ性に傾きすぎて、鉄やマンガンを吸えなくなります。石灰は毎年ではなく、酸度計で測ってから、あるいは1〜2年に1回にとどめます。酸度計は1,000円台から手に入り、刺すだけでpHが読めます。堆肥のほうは毎作入れてかまいません。有機物は分解されて減っていくので、補い続ける必要があります。
まとめ|耕して、整えて、畝を立てる
やることを並べ直すと、こうなります。土を見る、草と石を出す、20〜30cm耕す、石灰をまいて1〜2週間待つ、堆肥と元肥を入れる、畝を立てる。植え付け日から逆算して、3〜4週間前に動き出せば間に合います。
このスケジュールに乗せたい道具と資材は次のとおりです。
- 平鍬・剣先スコップ・レーキ(借りられるなら不要)
- 苦土石灰、堆肥(植物性または牛ふん)、化成肥料
- 酸度計、支柱とひも(畝をまっすぐ立てるため)
- 作業用の手袋と、土を運ぶ袋または一輪車
初年度の畑は、前の人の土をそのまま引き継いだ状態です。思ったほど育たない野菜が出ても、腕のせいとは限りません。堆肥を入れ続けて、草を出し続けて、2年目、3年目と土が変わっていきます。



初めて立てた畝は端が細く曲がっていましたが、キュウリはちゃんと育ってくれました。



畝は南北、水は低いほうへ。この2つを間違えなければ、あとは多少ゆがんでいても野菜は文句を言わないから。
関連記事|土作りの基本へ
この記事は、借りた区画をゼロから立ち上げる手順に絞りました。プランターの土との違い、土の三相や団粒構造といった「なぜそうするのか」の部分は土作りの基本の記事で解説しています。石灰の種類で迷ったら苦土石灰の記事、道具は道具リスト、2年目以降の計画は輪作の記事へどうぞ。
なお、区画の広さ・利用料・道具の貸し出し・資材の持ち込み可否は農園ごとに違い、募集内容も年度で変わります。申し込む前に、利用する農園の案内でご確認ください。








