防虫ネットは「かければ虫が入らない」道具ではありません。目合い(網目の細かさ)が合っていなければ通り抜けられますし、裾が浮いていればそこから歩いて入られます。この記事では、1mm・0.6mm・0.4mmの使い分け、幅と長さの測り方、プランターと畝それぞれの張り方の手順、そして隙間ができる原因と外すタイミングまでを順にまとめます。買う前の目合い選びと、張ってからの詰めの作業、その両方が分かる内容です。
防虫ネットで防げる虫・防げない虫
防虫ネットは薬剤ではなく、虫を物理的に入らせないための資材です。光と水と風は通し、虫の体は通さない。だから「虫が来る前に張る」ことが前提で、すでに卵が産みつけられた株にかぶせても、ネットの中で幼虫が育つだけになります。植え付けた日、種をまいた日にそのまま張ってしまうのが一番確実です。
防げるのは、成虫が飛んできて葉に卵を産むタイプの害虫です。モンシロチョウ(アオムシ)、コナガ、ヨトウガ、キスジノミハムシ、ウリハムシ、カメムシ、有翅(羽のある)アブラムシあたりが主な相手になります。アブラナ科の葉物は、ネットの有無で収穫時の姿がまるで変わります。
逆に防げないものもはっきりしています。土の中で越冬していたヨトウムシやネキリムシ、すでに株についていたアブラムシ、土から発生するタネバエ、そしてハダニのように風に乗って入り込む微小な虫。ネットは「外から飛んでくる虫」への対策であって、内側の虫は素通しです。張る前に葉裏をひと通り見て、卵や小さな幼虫がいないか確かめてから閉じてください。
目合い1mmと0.6mmと0.4mmの違い
目合いは網目一つの大きさで、数字が小さいほど細かくなります。細かいほど多くの虫を止められますが、そのぶん風が抜けにくく、夏場はトンネル内の温度が上がります。防ぎたい虫に対して過不足のないものを選ぶのが基本です。
| 目合い | 主に防げる虫 | 向く場面 |
|---|---|---|
| 4mm前後 | 鳥、大型のチョウ、ウリハムシ | 鳥よけ兼用。虫よけとしては力不足 |
| 1mm | アオムシ、ヨトウガ、カメムシ、ウリハムシ | 通気がよく真夏向き。汎用の一枚目 |
| 0.6〜0.8mm | 上記+コナガ、キスジノミハムシ、有翅アブラムシ | アブラナ科の葉物全般。迷ったらここ |
| 0.4mm以下 | 上記+アザミウマ、コナジラミ | 微小害虫が出る畑。夏は高温に注意 |
家庭菜園で一本だけ用意するなら0.6mmが扱いやすい選択です。1mmだと小松菜やカブに穴を開けるキスジノミハムシ(体長2mmほどの黒い甲虫)が入り込みますし、0.4mmは真夏のトンネルだと中がかなり暑くなります。0.6mmなら、家庭菜園でよく出る虫はおおむねカバーできます。
色についても触れておくと、白は光をよく通すので生育への影響が小さく、黒は遮光気味で夏の地温上昇をやや抑えます。銀糸(アルミの糸)が織り込まれたタイプは、光の反射を嫌うアブラムシを寄せつけにくくする働きがあります。ただし色より目合いのほうが効き方への影響は大きいので、まず目合いで選んでください。なお目合いと対象害虫の対応は製品によって表記が異なります。購入時はパッケージや商品ページの表示を基準にしてください。
サイズの選び方|幅と長さの測り方
サイズ選びで失敗する人の大半は、幅を足りなく買っています。ネットの幅は「かぶせる部分の長さ」ではなく、トンネルの断面をまたいで、両側の地面に垂らして押さえるまでの長さです。ここを見誤ると裾が地面に届かず、押さえようがなくなります。
必要な幅は、(畝またはプランターの幅)+(トンネルの高さ×2)+(左右の裾の余り各20〜30cm)で計算します。畝幅60cm・高さ40cmのトンネルなら、60+80+50でおよそ190cm。幅1.8mか2.1mのネットを選ぶことになります。畝幅が45cmでトンネルも低めなら1.35m幅で収まります。
長さは、畝の長さに1mほど足してください。両端を絞って土に埋める分、あるいは支柱に巻きつける分が要ります。ここをぴったりで買うと、端を閉じきれずに口が開いたままになります。
| 栽培場所 | トンネルの高さの目安 | ネット幅の目安 |
|---|---|---|
| 標準プランター(65cm)の葉物 | 30〜40cm | 1.35m |
| 畝幅45cmの葉物・根菜 | 30〜40cm | 1.35m |
| 畝幅60cmのキャベツ・ブロッコリー | 40〜50cm | 1.8〜2.1m |
| 畝幅90cmの背丈のある野菜 | 60cm以上 | 2.7〜3.6m |
高さは野菜の背丈から逆算します。小松菜やホウレンソウなら30cmで足りますが、キャベツやブロッコリーは結球・出蕾のころに葉が持ち上がるので、40〜50cmは見ておきたいところ。葉がネットに触れているとその部分だけ虫に食べられます。外から成虫が葉に口や産卵管を届かせてしまうためで、実際、ネットに押しつけられたキャベツの外葉だけが穴だらけになっていた、ということが起きます。
プランター用と畝用
プランターなら、ロール状のネットを買わずに専用カバーを選ぶ手もあります。「すっぽり虫よけカバー」のような、支柱とネットが一体になった製品です。標準プランター(幅65cm前後)に合う寸法で作られていて、かぶせてゴムや紐で絞るだけ。裾を埋める作業がいらないぶん、ベランダでは扱いが楽です。
一方、複数のプランターをまとめて覆いたい場合や、レンタル農園の畝に張る場合はロールで買ったほうが安く済みます。1.35m×5mや1.8m×10mといった単位で売られていて、必要な長さに切って使えます。切り口はほつれやすいので、端は折り返して洗濯ばさみや結束バンドで留めておくと持ちます。
買う前に、畝幅・畝の長さ・野菜の最終的な背丈の3つをメモしてから売り場に行く。

張り方の手順|支柱・トンネル・裾の押さえ
張る作業そのものは10分ほどで終わります。ただし風のある日にやると倍かかります。ネットが煽られて畝の外へ飛び、土をかぶって重くなり、それを直しているうちに支柱が抜ける。風の弱い時間帯を選んでください。
用意するものは、防虫ネット、トンネル支柱(グラスファイバー製のアーチ型が扱いやすい)、裾を留めるネット押さえ(U字ピンやシート押さえグリップ)、それに移植ゴテです。畝1mにつき支柱1本、つまり支柱の間隔は50〜60cmを目安にすると、ネットがたるみません。
プランターにかぶせる張り方
プランターは土に押さえピンを刺せないので、ふちでどう固定するかがすべてです。
まず、支柱を差します。プランターの四隅に細めの支柱を斜めに差してアーチを作るか、ダイソーなどで売っているアーチ型の園芸支柱を土に挿します。次にネットを、野菜の頭に触れない高さでかぶせ、四方の裾をプランターの外側に垂らします。
固定は、プランターのふちに沿ってネットを引き下ろし、洗濯ばさみで数か所留めるだけで足ります。ふちの下まで垂らしてから留めると、ふちとネットの隙間がなくなります。もう少しきちんとやるなら、裾に紐を通してプランターの胴回りを一周させ、絞って結ぶ。この方法だと収穫のときも紐をゆるめるだけで開けられます。
水やりは、ネットの上からそのままジョウロでかけて構いません。防虫ネットは水を通します。毎回外していると、そのたびに虫が入る機会を作ることになるので、開けるのは間引きと収穫のときだけにしてください。
畝にトンネルで張る張り方
畝の場合は、裾を土に埋める前提で進めます。
畝の両端から順に、トンネル支柱を50〜60cm間隔でアーチ状に差します。両側の足を同じ深さ(20cm程度)まで挿すと高さがそろいます。端の2本は少し内側に傾けて挿すと、ネットを引いたときに抜けにくくなります。
ネットを畝の端から転がすように広げ、支柱の上にかぶせます。左右の垂れ幅が同じになるよう、真上から見て中心を合わせます。
畝の両端でネットを絞り、余った部分をねじって土に埋めるか、短い支柱に巻きつけて杭で留めます。ここを最後に回すと、途中でネットがずれます。
片側の裾を畝の外側の土に置き、移植ゴテで土を10cmほどかぶせて足で踏みます。反対側は、ネットを軽く引いてたるみを取ってから同じように埋めます。埋めるのが難しい場所は、20cm間隔でU字ピンを打ちます。
上から手のひらで軽く押して、太鼓のように張っていればOK。ぶよぶよとたわむようなら、裾を掘り起こして引き直します。
裾は埋めるのが一番強く、押さえピンだけだと風で持ち上がることがあります。土をかぶせたうえでピンを打つ、と二重にしておくと、台風でも外れずに済みました。
隙間ができる原因と直し方
ネットを張ったのに虫食いが出るとき、原因のほとんどは目合いではなく隙間です。よくあるのは次の場所です。
まずトンネルの両端。左右の裾はきれいに埋めたのに、端の絞りが甘くて口が開いている、というパターンが多いです。ここは正面から見て光が漏れていないか確認します。次に支柱の付け根。支柱がネットを内側から突き上げて、その周りの土が浮いていることがあります。三つ目が畝の凹凸で、土が波打っているとネットとの間にトンネル状の隙間ができ、そこから虫が歩いて入ります。裾を埋める前に、畝の肩の土をならしておくと防げます。
四つ目が、収穫や間引きのあとの閉め忘れ。開けた側だけ埋め直しが浅くなりがちで、次に見たときには中でアオムシが育っている。私も一度これをやって、小松菜のトンネルの片側だけ食べられていました。
張ったあとの3点チェック
両端の絞りから光が漏れていないか
裾を手で引っぱって、土から抜けてこないか
葉がネットに触れて押しつけられていないか
すでに破れてしまったネットは、補修テープや透明のガムテープを内外から挟むように貼れば使えます。大きく裂けたら、その部分に別のネットを重ねて洗濯ばさみで留めるだけでも間に合います。
いつ外すか|受粉が要る野菜と要らない野菜
外すタイミングは、その野菜が虫の力を借りて実をつけるかどうかで決まります。
葉や根を食べる野菜——キャベツ、ブロッコリー、小松菜、水菜、大根、カブ、ホウレンソウ——は、収穫までかけっぱなしで問題ありません。実をつけさせる必要がないので、受粉を気にせずに済みます。むしろ結球期に外すと、そこからヨトウムシに入り込まれます。ただし、ネットの中で葉が押しつぶされそうなら、支柱を高いものに替えて張り直してください。
トマト、ナス、ピーマン、シシトウは自分の花の中で受粉が完了するので、こちらもネットのままで実がつきます。エダマメやインゲンなどの豆類も同じです。とはいえ背が高くなるので、実際には支柱の高さが足りなくなって外すことのほうが多いはずです。
問題は虫に受粉してもらう野菜です。キュウリ、カボチャ、ズッキーニ、スイカ、メロン、イチゴは、雌花が咲き始めたらネットを外すか、人工授粉に切り替える必要があります。ウリ科は苗が小さいうちがウリハムシの被害を受けやすいので、本葉4〜5枚くらいまでネットで守り、開花に合わせて外す。この使い分けが実用的です。ズッキーニやカボチャなら、朝の早い時間に雄花の花粉を雌花につける人工授粉で、ネットをかけたまま実らせることもできます。
トウモロコシは風で花粉が運ばれるので、ネットを張ったままでも受粉します。アワノメイガ対策としてネットが効くので、雄穂が出たあとも張っておける野菜です。

不織布との使い分け|防寒と防虫
売り場では防虫ネットの隣に不織布が並んでいます。似た見た目ですが、役割が違います。
使い分けの目安はこうなります。春から秋の防虫は防虫ネット、晩秋から冬の防寒は不織布。不織布は防虫にも使えますが、夏にかけると中の温度が上がりすぎて野菜が傷みます。逆に防虫ネットに保温を期待しても、ほとんど効きません。
秋まきの葉物なら、種まきから発芽までは不織布をべたがけ、発芽したら不織布を外して防虫ネットのトンネルに切り替える。冬に入って霜が降りるころ、防虫ネットの上から不織布を重ねる。この順に使うと、資材を両方買った元が取れます。
まとめ|植えた日に張る、裾を埋める
防虫ネットで結果を分けるのは、値段でも銘柄でもありません。植えた日・まいた日にすぐ張ること、そして裾を土に埋めきること。この2つができていれば、目合い0.6mmの標準的な製品で家庭菜園の虫害はかなり減ります。逆にこの2つを飛ばすと、どれだけ細かいネットを買っても中で虫が育ちます。
揃えるものは多くありません。
- 防虫ネット 0.6mm:迷ったらこの目合い。畝幅60cmなら1.8m幅、プランターや幅45cmの畝なら1.35m幅。長さは畝+1mで選ぶ
- トンネル支柱:グラスファイバー製のアーチ型が挿しやすい。野菜の背丈に合わせて高さを選び、50〜60cm間隔で使う本数を用意する
- ネット押さえ(U字ピン・シート押さえグリップ):土に埋めにくい場所や、頻繁に開け閉めする畝に。グリップ式は支柱ごとネットを挟めて着脱が速い
プランター中心なら、支柱とネットが一体になった虫よけカバーのほうが手早く始められます。畝が複数あるならロールで買って切り分けるほうが安く、余りは翌シーズンに回せます。製品ごとの目合い表示や対応サイズは、購入前にパッケージや商品ページで確認してください。
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