土作りの基本|家庭菜園で最初にやる順番と時期

両手にすくった黒くふかふかの家庭菜園の土

野菜がうまく育たないとき、原因の多くは種でも苗でもなく土の側にあります。この記事では、家庭菜園の土作りを「石灰→堆肥→元肥」という順番と、植え付けから逆算した時期でまとめました。畑の区画で一から仕込む場合と、ベランダのプランターで培養土を使う場合の違い、そしてやりがちな失敗も合わせて整理しています。

ゆみこおばあちゃん

野菜づくりは土が半分。苗を選ぶより先に、足元を見なさい。

目次

よい土の条件|水はけ・水もち・ふかふか

よい土という言葉はふわっとしていますが、中身は三つに分けられます。水はけ(余分な水が下へ抜けること)、水もち(必要な水を抱えていること)、そして通気性です。この三つは矛盾しているようで、実は同じ構造から生まれます。細かい粒がくっついて小さな塊になり、その塊と塊のすきまを水と空気が通る——この状態を団粒構造と呼びます。塊の内側は水を抱え、塊のあいだは水を通す。だから同時に成り立ちます。

握ってみると分かりやすいです。軽く握って固まり、指で押すとほろりと崩れる土は団粒ができています。握っても粉のまま散る土は砂っぽく水もちが足りず、逆に粘土のように団子になって崩れない土は水はけが悪い。掘り返したとき根が地中でぐるぐる横に曲がっていたら、下の層が固くて根が下りられていない合図です。

もうひとつ、目には見えない条件が酸度(pH)です。日本は雨が多く、土は放っておくと酸性に傾きます。多くの野菜が好むのはpH6.0〜6.5のあいだで、ここから外れると根が養分を吸いにくくなります。ホウレンソウのように酸性を特に嫌う野菜もあれば、ジャガイモやサツマイモのようにやや酸性寄りを好む野菜もあります。この酸度を整えるのが、次の章の一歩目です。

団粒構造は一度作って終わりではありません。雨と潅水で少しずつ崩れ、踏み固められて戻っていきます。だから堆肥を毎年入れる。土作りは工事ではなく、積み立てに近い作業です。

耕した土の上にまかれた粒状の苦土石灰

土作りの順番|石灰→堆肥→元肥の3ステップ

畑や庭の地面で一から作る場合、順番と間隔が決まっています。先に全体像を置きます。

STEP
2週間前:石灰をまいて耕す

雑草と前作の根を取り除き、深さ25〜30cmを目安に耕します。そこへ苦土石灰を全体にまき、土とよく混ぜます。

STEP
1週間前:堆肥を入れて耕す

完熟堆肥を広げ、もう一度耕して混ぜ込みます。石灰から最低でも1週間は空けます。

STEP
植え付け直前:元肥を入れて畝を立てる

元肥を全体または植え溝に入れて混ぜ、畝を立てて表面をならします。数日置いてから苗を植えます。

石灰で酸度を整える 植え付けの2週間前

石灰は酸性に傾いた土を中和して、pHを上げる資材です。家庭菜園で扱いやすいのは苦土石灰で、カルシウムに加えてマグネシウム(苦土)を含みます。マグネシウムは葉緑素の材料なので、不足すると下の葉から色が抜けていきます。

量の目安は袋の表示に従うのが確実ですが、一般的な苦土石灰なら1㎡あたり100gでpHが約0.5上がります。100gは両手で軽くひとすくいほど。前作でよく育っていた区画なら100g前後、雨ざらしで何年も何も入れていない酸性寄りの土なら150g程度まで、といった幅で考えます。迷ったら少なめから。アルカリ側に振りすぎた土を戻すのは、酸性を直すよりずっと手間がかかります。

まいたら表面に置いたままにせず、耕して土と混ぜます。そこから効き始めるまでに時間がかかるので、植え付けの2週間前に済ませておく。これが逆算の起点になります。なお、消石灰や生石灰は反応が強く、まいた直後の植え付けができません。家庭菜園では苦土石灰か、カキ殻などを原料にした有機石灰のほうが扱いやすいです。

苦土石灰の種類や粒状・粉状の選び方は苦土石灰の使い方の記事で詳しく書いています。

堆肥で土をふかふかにする 1週間前

堆肥は肥料というより、土そのものを作り替える資材です。有機物が土の中の微生物のえさになり、その活動の過程で粒がくっついて団粒ができていきます。水はけと水もちが同時に良くなるのは、この働きによります。

量は堆肥の種類で大きく変わります。落ち葉やバーク(樹皮)などの植物性堆肥は1㎡あたり2〜5kg、牛ふん堆肥なら2〜3kg、鶏ふんのように肥料成分の濃いものは0.5〜1kg程度と、袋の表示の範囲内で。植物性のものは土をふかふかにする力が強く、動物性のものは養分も一緒に入ります。ベランダで扱うなら、においの少ないバーク堆肥が無難です。

大事なのは完熟したものを使うこと。未熟な堆肥を入れると、土の中で分解が進む過程でガスや熱が出て、根が傷みます。袋を開けたときに土のようなにおいなら完熟、鼻にツンとくるアンモニア臭や強い発酵臭がするなら、少し寝かせてから使います。生ごみや落ち葉から自分で作る方法は堆肥の作り方の記事にまとめました。

元肥を入れて畝を立てる

元肥(もとごえ)は、植え付け前にあらかじめ入れておく肥料です。生育の途中で足す追肥に対して、序盤を支える分を先に仕込んでおくイメージになります。化成肥料なら1㎡あたり100〜150g、有機質肥料なら表示量の範囲で、やや多めでも効きがゆるやかです。化成肥料と有機質肥料の違いは化成肥料と有機肥料の比較記事で整理しています。

入れ方は二通りあります。全面施肥は区画全体に混ぜ込む方法で、葉もの野菜や根菜のように株間が狭いものに向きます。溝施肥は植える列の下に溝を掘って入れる方法で、トマトやナスのように長く育てて根を深く張る野菜に向きます。根が肥料に届くまで時間がかかるぶん、後半までじわじわ効きます。

最後に畝を立てます。畝は土を細長く盛り上げたもので、水はけを良くして根の張る空間を稼ぐためのものです。高さは10cm前後が標準、水はけの悪い区画や梅雨をまたぐ作付けでは20〜30cmの高畝にします。幅は育てる野菜と株数で決まりますが、片側から手が届く60〜70cmが扱いやすい。立てたあと表面を軽く押さえてならしておくと、雨で崩れにくくなります。

培養土を入れたプランターと小さな移植ごて

プランターなら培養土で済ませてよい

ここまでの3ステップは、地面の土を相手にする場合の話です。プランター栽培なら、市販の培養土を袋から入れるだけで土作りは完了します。 石灰も堆肥も元肥も、すでに調整済みだからです。

野菜用と書かれた培養土は、たいていpHが6前後に調整され、初期の肥料も入っています。だから買ってきたその日に植えられる。初めての一鉢で、赤玉土や腐葉土を自分でブレンドする必要はありません。

選ぶときに見るのは、袋の裏の表示です。「元肥入り」なら植え付け後しばらく追肥が要りません(逆に元肥なしの土なら、植えるときに肥料を混ぜます)。粒がしっかりしていて、持ったときに軽すぎないものが崩れにくい。安価な培養土は未熟な有機物が混じっていることがあり、植えてしばらくしてから土が沈み込みます。培養土の見分け方は培養土の選び方の記事にまとめました。

入れるときは縁いっぱいまで詰めず、上を2〜3cm空けます。ここがウォータースペースになり、水やりのときに土と水があふれずに済みます。鉢底石は、底穴が大きめのプランターや、水はけの悪さが気になるときに使う程度で十分です。

古い土を使い回すとき

一度野菜を育てた培養土は、養分が抜け、根の残りかすが混じり、粒も崩れています。そのまま次の苗を植えると生育が鈍いので、リセットしてから使います。

手順はふるいにかけて古い根とゴミを取り、黒いポリ袋に入れて夏の日なたに2週間ほど置く。この太陽熱消毒で、土の中に残った病原菌や虫の卵をある程度減らせます。そのあと新しい培養土や腐葉土を2〜3割足し、苦土石灰を少量と元肥を混ぜれば、また使えます。手を抜きたい日は、市販の再生材を混ぜる方法もあります。詳しい手順は古い土の再生の記事へ。

前作で病気が出た土は、消毒しても持ち越すことがあります。惜しまず処分してください。

借りた区画の土作り|前の人の土をどう見るか

レンタル農園や市民農園の区画は、更地に見えても前の利用者の栽培の跡が残っています。最初にやるのは資材をまくことではなく、観察です。

生えている雑草が手がかりになります。スギナやスイバが目立つ区画は酸性に傾いていることが多く、逆にハコベやオオイヌノフグリが元気な区画は、比較的肥沃で酸度も落ち着いています。雑草がまばらにしか生えていない土は、養分が少ないか固く締まっているかのどちらかです。

次にスコップを垂直に差し込んでみます。すっと入れば問題なし。10cmほどで止まるなら、その下に固い層(耕盤)があります。トラクターや足で繰り返し踏まれた土が板状に固まったもので、ここが残っていると根も水も下へ行けません。見つけたら、スコップを深く差して前後に揺らし、下の層を砕いておきます。

酸度は試験紙や簡易測定器で測れます。数百円から千円台のもので十分で、はじめの1回だけでも測っておくと石灰の量を勘に頼らずに済みます。前の人が長く使っていた区画は、肥料が残っていることも珍しくありません。その場合、元肥は控えめにします。借りた区画ならではの見立てと初年度の進め方はレンタル農園の土作りの記事でまとめています。

土作りで失敗しやすいこと

順番どおりにやったつもりでも、つまずきやすい場所が三つあります。

石灰と堆肥を同じ日に入れる

休みの日にまとめて済ませたくなるのですが、これが一番やりがちです。アルカリ性の石灰と、窒素を含む堆肥や肥料が同時に反応すると、アンモニアガスが発生します。せっかくの窒素が空気中へ逃げ、発生したガスは根や芽を傷めます。

【石灰と堆肥は日を分ける】

石灰をまいて耕したら、最低1週間は空けてから堆肥・元肥へ進みます。

逆算すると、石灰は植え付けの2週間前。週末しか作業できないなら、2週続けて通う計画にします。

反応のおだやかな苦土石灰や有機石灰なら同時でも大きな問題は起きにくいのですが、間隔を空けたほうが確実です。一方、石灰を毎回必ず入れる必要もありません。前年に入れていて、測ったpHが6前後なら省いて構いません。毎年まき続けるとアルカリ側に寄りすぎます。

肥料の入れすぎ

よく育ってほしい気持ちが、そのまま肥料袋の手に出ます。けれど濃すぎる肥料は土の中の濃度を上げ、根から水を奪って傷めます。これが肥料焼けです。植えた苗が数日でしおれたら、水不足より先に肥料を疑います。

窒素が多すぎる状態も分かりやすく出ます。葉ばかり大きく茂って花が付かない、実が止まらない、いわゆる「つるぼけ」です。トマトやキュウリで起きると収穫が遅れます。葉が濃い緑を通り越して黒っぽく、茎が異様に太いときは、追肥を止めて様子を見ます。

足りない分は追肥で足せますが、入れすぎた分は簡単には抜けません。元肥は表示量の下限からで十分です。

同じ場所に同じ科を続けて植える

トマトの後にナス、その次にピーマン——どれも同じナス科です。同じ科の野菜を同じ場所で続けると、特定の養分が偏って減り、その科を狙う土の中の病原菌や線虫が増えていきます。これが連作障害で、土作りをきちんとやっても収穫が落ちる原因になります。

目安として、ナス科は3〜4年、ウリ科は2〜3年、アブラナ科は1〜2年空けます。逆にサツマイモやトウモロコシ、タマネギは比較的連作に強い野菜です。区画に余裕がなければ、接ぎ木苗を使う、プランターで土ごと入れ替える、という逃げ道もあります。科ごとの間隔と輪作の組み方は連作障害と輪作の記事にまとめました。

まとめ|土作りは植え付けの2週間前から

やることは多く見えますが、核は逆算だけです。苗を買う日を決めたら、その2週間前に石灰、1週間前に堆肥、直前に元肥と畝立て。プランターなら培養土の袋を買ってきて、その日に植える。この二つを押さえておけば、あとは野菜ごとの調整です。

最初の年から完璧な土を作ろうとしなくて大丈夫です。うまく育たなかった作は、何が足りなかったかを教えてくれます。水はけが悪ければ次は畝を高くする、葉ばかり茂ったら元肥を減らす。そうやって少しずつ、区画は手に馴染んでいきます。

みのり

耕したあとの土のにおいが、毎年ちょっと楽しみになってきました。

道具と資材は、最初にそろえるならこれだけで足ります。

  • 苦土石灰(粒状タイプは手にまとわりつかず扱いやすい)
  • 完熟堆肥(ベランダならにおいの少ないバーク堆肥)
  • 元肥用の肥料(化成肥料か有機質肥料)
  • 野菜用培養土(プランター栽培の場合はこれ1つ)
  • 剣先スコップ・レーキ(区画を借りる場合)
  • pH試験紙または簡易土壌酸度計
石灰をまいてすぐ植えてしまいました。どうすればいいですか

苦土石灰や有機石灰なら反応がおだやかなので、そのまま様子を見て構いません。水やりを控えめにして根の傷みを防ぎ、追肥は2週間ほど待ちます。葉が黄色くなるなどの異変が出たら、次の作から間隔を空ければ十分取り返せます。

毎年石灰を入れないといけませんか

いいえ。pHを測って6.0〜6.5に収まっていれば入れません。まき続けるとアルカリ側に寄りすぎて、鉄やマンガンなどの微量要素が吸えなくなります。堆肥は毎年入れる、石灰は測って判断する、と分けて考えます。

培養土の袋に「元肥入り」とありますが、追肥はいつからですか

製品にもよりますが、植え付けからおよそ1か月が目安です。葉の色が薄くなってきたら追肥のサインと考えると分かりやすいです。詳しい時期は袋の表示を確認してください。

ゆみこおばあちゃん

一度に全部やらなくていい。毎年少しずつ良くなっていくものだから。

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