追肥(ついひ)は、植え付けのときに土へ混ぜた肥料が切れてくる頃に、あとから足す肥料のことです。やること自体は「肥料をまく」だけなのに、いつ・どこに・どれだけ置くかで野菜の育ち方がはっきり変わります。この記事では、タイミングの見分け方、株元を避けて置く理由、野菜別の回数の目安、液体肥料と固形肥料の使い分け、そしてやりすぎたときのサインまでを順にまとめます。
みのり葉の色って、思っているよりずっと正直です。



肥料の袋を見る前に、葉っぱの色を見るのよ。下の葉が黄ばんできたら足しどき、上の葉が濃い緑でぬめっとしてたら足さない。畑仕事はそこから始まります。
追肥とは|元肥が切れる頃に足す
野菜づくりの肥料は、大きく二回に分けて与えます。植え付け前に土へ混ぜ込むのが元肥(もとごえ)、育っている途中で足すのが追肥です。培養土の袋に「元肥入り」と書かれている市販の土は、この一回目がすでに済んでいる状態で売られています。
元肥入りの培養土の肥効は、製品にもよりますが植え付けから1〜2か月ほどが目安です。ミニトマトやナスのように夏じゅう実をつけ続ける野菜は、その間ずっと養分を使い続けます。実をつける期間が長い野菜ほど、追肥なしでは途中で息切れします。逆に、種まきから30日前後で収穫してしまうコマツナのような葉ものは、元肥だけで最後まで走りきれることも多いのです。
元肥と追肥の役割の違い
元肥は、根が伸びていく先に養分を置いておく「土台」です。効きがゆっくりの有機質肥料や緩効性の化成肥料が使われ、土全体に混ぜ込みます。一方の追肥は、育ち具合を見ながら足す「補給」です。すでに根が張っている場所へ与えるので、土に深く混ぜ込むことはできません。土の表面に置いて、水やりで少しずつ溶かして届けます。
この性格の違いは、肥料選びにもそのまま出ます。元肥には効き始めが遅くても長く効くものを、追肥には比較的早く効くものを選ぶ——これが基本の分け方です。
タイミングの見方|実がつき始めたら・葉の色が薄くなったら
カレンダーで決めるより、株を見て決めるほうが失敗しません。合図は大きく二つあります。
ひとつめは最初の実がつき始めたとき。実もの野菜は、花が咲いて実がふくらみ出した瞬間から養分の消費量が跳ね上がります。ミニトマトなら一番花の房の実がピンポン玉ほどになった頃、キュウリやナスなら最初の実を収穫した頃が一回目の追肥どきです。ここを外すと、その後の実が小さくなったり、実つき自体が止まったりします。
ふたつめは下のほうの葉の色が薄くなってきたとき。肥料の三要素のうち窒素は植物の体内を移動するので、足りなくなると古い下葉から先に養分が抜けて黄色っぽくなります。上の新しい葉は濃い緑のままなのに下葉だけ黄ばむ——これが肥料切れの典型的な出方です。
生育が止まって見えるとき、原因が肥料ではなく水切れや根詰まりのこともあります。鉢底や土の乾き具合も一度確かめてください。
一回目のあとは、2〜3週間に一度のペースで続けるのが標準です。ただしプランターは水やりの回数が多いぶん肥料成分が流れ出やすいので、畑よりやや短い間隔になる場合があります。


置く場所|株元でなく葉の広がりの先
追肥でいちばん間違えやすいのが、置く場所です。株元にどさっと盛ってしまう人が多いのですが、養分を吸っているのは太い根の付け根ではなく、根の先端にある細い根です。そして根の先端は、地上部とだいたい同じくらいの広がりまで伸びています。
目安は「葉が広がっている、その真下の外側」。ここに置けば、水やりのたびに溶けた肥料が細い根の集まる層へ届きます。株元に直接置くと、濃い肥料分が太い根や茎に触れて傷める原因にもなります。
プランターは縁に沿って
プランターや鉢では、容器の縁に沿ってぐるりとまくのが定位置です。株が容器の中央に植わっているなら、縁まわりがちょうど根の先端のあたりになります。
まいたあとは、表面の土と軽く混ぜるか、上から少し土をかぶせておくと肥料が流れ出しにくくなります。そのままたっぷり水をやって溶かしてください。土が減って肥料が置きにくいときは、この機会に培養土を足しておくと株元の安定にもなります。
畑は畝の肩に
畑やレンタル農園の区画では、畝(うね)の斜面部分——いわゆる「畝の肩」にまきます。まいたら移植ごてや鍬の先で表土を軽くかき混ぜ、そのまま株元に土を寄せると、肥料が土に隠れて雨でも流れにくくなります。追肥と土寄せ、中耕(なかこう。株のまわりの土を浅く耕して空気を入れること)をまとめて一度にやってしまうのが、畑での定番の流れです。
株が大きくなるにつれて根も外へ伸びるので、二回目、三回目と回を追うごとに置く位置も少しずつ外側へずらしていきます。
野菜別の目安|実もの・葉もの・根菜・豆類
野菜のタイプによって、追肥の回数も切り出しのタイミングも変わります。下の表は家庭菜園でよく育てられる野菜の目安です。品種や植え付け時期、土の状態で前後するので、実際の株の様子と合わせて判断してください。
| タイプ | 主な野菜 | 一回目の目安 | その後の間隔 |
|---|---|---|---|
| 実もの | ミニトマト・ナス・キュウリ・ピーマン | 最初の実がふくらみ始めた頃〜初収穫の頃 | 2〜3週間ごと(収穫が続く間ずっと) |
| 葉もの(短期) | コマツナ・ホウレンソウ・サニーレタス | 本葉3〜4枚・間引きのあと(不要な場合も多い) | 収穫まで0〜1回 |
| 葉もの(長期) | キャベツ・ブロッコリー・白菜 | 植え付け2〜3週間後 | 結球・花蕾が出始める前にもう1〜2回 |
| 根菜 | ダイコン・ニンジン・カブ | 間引きのたび(最終間引きまで) | 根が太り始めたら打ち止め |
| イモ類 | ジャガイモ | 芽かきのとき | 2回目は土寄せ・つぼみの頃まで |
| 球根もの | タマネギ | 冬のあいだに1回 | 春先にもう1回。春の彼岸以降は与えない |
| 豆類 | エダマメ・インゲン・ソラマメ・エンドウ | 花が咲き始めた頃 | 少なめに1〜2回 |
表のなかで特に注意したいのが根菜と豆類です。ダイコンやニンジンは根が太り始めてから窒素が効きすぎると、葉ばかり立派になって根が育たなかったり、又根(またね。根が二股以上に分かれること)が出やすくなったりします。根菜の追肥は、間引きと一緒に早めに済ませて終わりと覚えておくと分かりやすいです。
豆類は、根に共生する根粒菌が空気中の窒素を取り込んでくれるため、もともと窒素をあまり必要としません。元肥も追肥も控えめが正解で、与えるとしても花が咲く頃に少量です。タマネギの春の追肥も似た事情で、遅すぎると球の締まりや貯蔵性が落ちます。


液肥と固形の使い分け
追肥に使う肥料は、大きく固形と液体に分かれます。どちらが優れているというより、効き方の速さと持ちが逆なので、場面で選びます。
家庭菜園の基本は、固形の化成肥料を2〜3週間ごとに置く形です。袋に「8-8-8」などと書かれているのは、窒素・リン酸・カリの含有率がそれぞれ8%という意味で、三要素が同じ割合の化成肥料は野菜全般に使いやすい配合です。
液体肥料(液肥)は、水で薄めて水やり代わりに与えます。製品によりますが、野菜には500〜1000倍に薄めて週1回程度という表示が多く見られます。実がつき出したミニトマトのように養分をどんどん使う時期に、固形の追肥の合間へ挟むと効きが安定します。
肥料の適量は、成分の濃さによって何倍も違います。化成肥料は1平方メートルあたり何グラム、プランターなら1株あたり何グラム、と製品ごとに表示されています。ネット上の一般的な目安より、手元の袋に書かれた数字を優先してください。
迷ったときは、表示量の下限から始めて株の反応を見るほうが安全です。
鶏ふんや牛ふんなどの有機質肥料を追肥に使うこともできます。ただし発酵が不十分なものを株元に置くと、分解の過程でガスや熱が出て根を傷めます。追肥に回すなら完熟表示のあるものを選び、土の表面に薄く広げてください。
やりすぎのサイン|葉ばかり茂る・実がつかない・葉先が焼ける
肥料は足りないより多すぎるほうが厄介です。足りなければ後から足せますが、入れすぎた肥料は土から抜けてくれません。
窒素が過剰になると、株は葉と茎を伸ばすほうへ全力を注ぎます。葉が濃い緑色になって大きく茂り、茎が異様に太いのに花が落ちて実がつかない——キュウリやカボチャで言う「つるぼけ」がこの状態です。ミニトマトでは、生長点まわりの若い葉がくるりと内側に巻き込むのが窒素過多の分かりやすい合図になります。
もうひとつが葉先が茶色く枯れ込む症状。土の中の肥料濃度が高くなりすぎると、根は水を吸うどころか逆に水分を奪われ、先端から傷んでいきます。プランターは土の量が限られるぶん濃度が上がりやすく、この症状が出やすい環境です。
やりすぎたと思ったら、追肥をいったん止め、プランターなら鉢底から流れ出るまでたっぷり水を通して余分な肥料分を洗い流してください。
ひと夏に何度もやってしまうのが、追肥の直後に「なんだか元気がない気がする」と液肥を足す二重投与です。固形の追肥は効き始めるまで数日かかります。置いた日を忘れないよう、プランターの縁にマスキングテープで日付を書いておくと、この失敗はほぼなくなりました。
まとめ|2〜3週間に一度、少なめから
追肥のコツは、結局のところ三つに集約されます。実がつき始めたら始める、葉の広がりの先に置く、2〜3週間に一度、表示量の少なめから。この三つを守れば、大きく外すことはありません。
迷ったら、与えないより「少なく与える」。回数で調整するほうが立て直しがききます。
道具は多くありません。用途で選ぶなら次のあたりが揃っていれば十分です。
- 三要素が均等な化成肥料(8-8-8など)——固形の追肥の主力。プランターにも畑にも使えます
- 液体肥料の原液——収穫最盛期の補いや、弱った株の立て直しに
- 計量スプーンつきの肥料ケース——「ひとつまみ」をやめると量のブレが減ります
- 希釈用の目盛りつきジョウロ——液肥の倍率を目分量にしないために



最初の夏は追肥を張り切りすぎて、ナスの葉だけ立派に茂らせました。あの株のことは今でも思い出します。
関連記事|肥料の違いとミニトマトへ
追肥に使う肥料そのものを選び分けたい方は、化成肥料と有機肥料の違いを先に読んでおくと、袋の表示の見方がぐっと分かりやすくなります。
追肥の出番がいちばん多い野菜はミニトマトです。植え付けから収穫までの流れのなかで、どのタイミングで肥料を足すかはミニトマトの育て方にまとめています。
なお、肥料の希釈倍率や1株あたりの使用量は製品ごとに異なります。実際に使う分量は、お手元の肥料の表示を確認してください。



長年見てきて言えるのはね、足りない失敗より多すぎる失敗のほうがずっと多いってこと。足りなければ一週間後に足せばいいけど、入れすぎた肥料は土から取り出せません。迷ったら半分にしておきなさい。








