じゃがいもは、土に埋めて土を寄せるだけの野菜に見えて、収穫時にがっかりする人がいちばん多い野菜でもあります。小さい芋ばかり、数が採れない、掘ったら緑になっていた——その原因はたいてい、種芋の準備と土寄せの2か所に集約されます。この記事では、植え付けの時期と深さ、種芋の切り方と乾かし方、芽かきと土寄せのタイミング、追肥、培養土の袋をそのまま使う袋栽培、そして病害虫と収穫の見きわめまでを順にまとめました。緑色になった芋を食べていいかどうかも、公的機関の注意にそって整理します。
栽培の流れと時期|暖地は2月下旬〜3月植え、6月収穫、秋作は9月植え
じゃがいもはナス科の作物で、トマトやナス、ピーマンと同じ仲間です。冷涼な気候を好み、生育に適した気温はおおむね15〜20度。地温が5〜6度あれば芽は動き出しますが、霜に当たると地上部が傷むため、遅霜のリスクが抜ける時期を狙って植えます。
春作の流れは、植え付け → 芽かき(1回目の土寄せ) → 2回目の土寄せと追肥 → 開花 → 葉が黄色くなったら収穫、という5段階です。植え付けから収穫まではおよそ90〜110日。暖かい地域ほど早く動き出します。
| 地域の目安 | 春作の植え付け | 春作の収穫 |
|---|---|---|
| 暖地(九州・四国・関東南部の温暖な平野部) | 2月下旬〜3月中旬 | 5月下旬〜6月中旬 |
| 中間地(関東〜近畿の平野部) | 3月中旬〜4月上旬 | 6月中旬〜7月上旬 |
| 寒冷地(東北・北海道) | 4月中旬〜5月中旬 | 8月〜9月 |
秋作は8月下旬〜9月に植えて、11月下旬〜12月に掘ります。ただし秋作ができるのは、霜が降りるまでに芋が太る暖地〜中間地が中心です。秋作に使えるのは、休眠が浅くてすぐ芽が出るデジマ・ニシユタカ・アンデスレッドなどの品種で、男爵いもやメークインは休眠が深く、秋に植えても芽が出ないまま腐ることがあります。秋作の種芋は切らずに丸のまま植えるのが基本です。地温が高い時期に切り口を作ると、そこから腐りやすいからです。
初めて育てるなら、春作から始めるほうが失敗が少なくなります。以下の説明も春作を前提にしています。

種芋の準備|食用の芋を使わない理由と切り方
台所で芽が出てしまった芋を、そのまま埋めたくなります。気持ちはわかるのですが、これはやめておいてください。理由は2つあります。
ひとつは病気です。じゃがいもはウイルス病や軟腐病、そうか病などを芋そのものが持ち越します。園芸店やホームセンターで「種いも」として売られているものは、植物防疫法にもとづく検査に合格したもので、ウイルスや細菌の汚染がきわめて少ない状態で流通しています。食用の芋にはその保証がありません。一度畑に病気を持ち込むと、じゃがいもだけでなく同じナス科のトマトやナスにも影響が出ます。
もうひとつは発芽の揃いです。食用の芋は貯蔵中に芽が出ないよう管理されているものが多く、植えても芽の出方がばらつきます。芽が出ても勢いが弱く、結果として収量が落ちます。
種芋は必ず「種いも」として売られているものを買う。これだけで失敗の半分は消えます。
買ってきた種芋は、植え付けの2〜3週間前から明るい室内(直射日光は避ける)に置いておくと、芽が短く太く動き出します。これを浴光催芽(よっこうさいが)と呼びます。必須ではありませんが、植えたあとの初期生育がそろいます。
切るか、丸ごと植えるか
目安は重さです。1個40g以下の小さめの芋は切らずに丸ごと植えます。それより大きいものは、1片が30〜50gになるように、芽(芽の出るくぼみ=芽目)が2個以上つくよう縦に切り分けます。じゃがいもは頂部(ストロンがついていた側の反対、芽目が集まっているほう)ほど芽の勢いが強いので、頂部を等分するように縦に切ると、どの片にも強い芽が行き渡ります。横に輪切りにすると、勢いの弱い片ができてしまいます。
切ったあとは切り口を乾かします。風通しのよい日陰に2〜3日置いて、表面が白っぽくコルク質になればよい状態です。急ぐときは切り口に草木灰やジャガイモ用の切り口保護剤(ベンレートT水和剤など)をまぶす方法もあります。乾かさずに濡れた土に植えると、切り口から腐ることがあります。
植え付け前に、種芋1kgあたり何株分になるかを数えておくと、畝の長さや袋の数を決めやすくなります。40g前後に切り分ければ、1kgでおよそ20〜25株分です。
植え付け|深さと間隔、石灰は入れない
じゃがいもは弱酸性の土を好みます。適正なpHはおよそ5.0〜6.0で、多くの野菜より低め。ここが大事なところで、石灰をまいて土をアルカリ寄りにすると、そうか病が出やすくなります。芋の表面がかさぶた状にざらつく、あの病気です。ほかの野菜の感覚で苦土石灰を入れると裏目に出ます。
じゃがいもを植える区画には、石灰資材を入れないでおきます。前作で石灰を入れた区画なら、少し時間を空けるか別の場所を選びます。石灰の役割とまくかどうかの判断は、苦土石灰の使い方で整理しています。
元肥は、植え付け前に1㎡あたり堆肥2kgと化成肥料(8-8-8など)100g程度を全面にすき込むのが標準的なやり方です。未熟な堆肥はそうか病を招くので、完熟したものを使います。
幅60〜70cmの畝を立て、中央に深さ10cm前後の溝を掘ります。プランターの場合は深さ30cm以上・容量25L以上のものを選び、土を半分ほど入れた状態にしておきます。
株間30cmで並べます。切った種芋は、切り口を下に向けて置くのが一般的です。畝の外側ではなく中央にまっすぐ並べると、あとの土寄せが楽になります。
芋の上に7〜10cmの土がのるようにかぶせ、軽く押さえます。浅いと新しい芋が地表に近い位置につき、緑化しやすくなります。
種芋には十分な水分があり、植え付け直後の水やりは腐敗の原因になります。プランターでも、植え付け時は土が湿っている程度で十分です。
芽が出てくるまで2〜4週間かかります。何も動きがないと不安になりますが、この時期は待つだけです。

芽かきと土寄せ|2〜3本残して2回寄せる
1つの種芋からは、たいてい4〜6本の芽が出ます。全部育てると養分が分散して、小さい芋ばかりになります。そこで間引くのが芽かきです。
草丈が10〜15cmになったら、太くて元気な茎を2〜3本残して、残りを抜きます。残す本数で芋の大きさと数が変わり、2本残すと大きめの芋が少なめに、3本残すと中くらいの芋が多めに採れます。カレーや粉ふきいも向けに大きめが欲しいなら2本、数が欲しいなら3本という選び方です。
抜くときは、片手で株元の土をしっかり押さえ、もう片方の手で抜きたい茎を根元近くから斜めに引きます。押さえずに引くと、種芋ごと持ち上がってしまいます。抜きにくければ、地際でハサミを使ってもかまいません。
土寄せは2回
じゃがいもの芋は、種芋から上に伸びた茎(ストロン)にできます。だから土が足りないと、芋が地表に顔を出して日に当たり、緑色になります。土寄せはこれを防ぐ作業です。
1回目は芽かきと同時に、株元へ5cmほど土を寄せます。2回目は、つぼみが見え始める〜開花のころに、さらに5〜10cm。合計で、株元が10〜15cm高くなっている状態を目指します。手のひらで寄せるのではなく、畝の間の土をクワですくって株元に盛るイメージです。
土寄せを省くと、収穫時に緑色の芋が混ざります。緑化した芋は食べられないので、そのまま収量の減少になります。
追肥|土寄せと同時に
追肥は土寄せと同じタイミングで行うと手間が一度で済み、肥料が土に混ざって効きやすくなります。
1回目は芽かき・1回目の土寄せのとき。株のまわりに化成肥料(8-8-8など)を1株あたり20〜30g、1㎡あたりでは50g程度まきます。まいたら軽く土と混ぜてから土を寄せます。2回目は開花前後の土寄せのときに、同量を目安に。プランターや袋栽培なら、1株あたり10〜15g程度を株元から離してまきます。
窒素が多すぎると、葉ばかり茂って芋が太りません。追肥は2回まで、開花以降は増やさないのが無難です。生育が明らかに悪い場合を除いて、規定量を守るほうが結果が良くなります。
水やりについては、露地なら基本的に不要です。じゃがいもは過湿に弱く、雨が続くと疫病や腐敗が出ます。プランター・袋栽培は土が乾きやすいので、表面が乾いたらたっぷり与えます。ただし収穫の2週間ほど前からは水を控えると、芋が締まって保存性が上がります。

袋栽培のやり方|培養土の袋で何個植えて何個採れるか
ベランダなら、培養土の袋をそのまま鉢にしてしまうのがいちばん手軽です。買ってきた袋を立てて、上面を開き、底に排水穴を開けるだけ。深さが確保できるうえ、土を足すだけで土寄せになるので、じゃがいもとは相性がいい方法です。
袋の容量で植える数が決まります。25Lの培養土袋なら種芋は1個、40L以上の大袋でも2個まで。詰め込むと小さい芋しか採れません。底には直径1cmほどの穴を5〜6か所、側面の下のほうにも数か所開けて、水が抜けるようにします。
手順はシンプルです。袋の上部を内側に折り返して丈を低くし、土を10〜15cmの高さまで残した状態にします(残りの土は別の袋やバケツにとっておく)。そこに種芋を置いて5cmほど土をかぶせ、芽が10cmほど伸びたら折り返しを少し戻して土を足す。これを2回くり返して、最終的に袋いっぱいまで土が入っていれば土寄せは完了です。
収量の目安は、1株あたり400g〜1kg程度。うまくいけば、25Lの袋ひとつから中くらいの芋が8〜12個ほど採れます。私の場合、日当たりが半日ほどのベランダで600g前後に落ち着くことが多く、数は採れても男爵いものような大玉にはなかなかなりません。それでも、掘りたてを皮ごと蒸すと十分においしいので、毎年やめられずにいます。
収穫は袋を横に倒して土を広げるだけ。スコップで芋を傷つける心配がないのは、袋栽培のいいところです。
病害虫|そうか病・テントウムシダマシ・緑化した芋
じゃがいもで実際に困るのは、ほぼこの3つと疫病です。
そうか病
芋の表面がかさぶた状にざらつく細菌性の病気。食べられないわけではありませんが、皮を厚くむくことになり見た目も悪くなります。原因は土のアルカリ化、未熟な堆肥、そして連作。石灰を入れないこと、完熟堆肥を使うこと、同じ場所でナス科を続けないことが対策のすべてです。一度出た区画は、数年あけるまで再発しやすくなります。
テントウムシダマシ(ニジュウヤホシテントウ)
星が28個ある、体に細かい毛が生えたつや消しのテントウムシです。ナナホシテントウがアブラムシを食べる益虫なのに対し、こちらは葉を網目状に食べる害虫。5月ごろから現れ、葉がレースのようにスカスカになります。数が少ないうちは手で取るのが確実です。幼虫は葉の裏にいるので、葉裏を見る癖をつけると早く気づけます。増えてしまった場合は、じゃがいもへの適用があるスミチオン乳剤やベニカベジフルスプレーなどを使います。製品ごとに希釈倍率と収穫前日数(収穫の何日前まで使えるか)が決まっているので、必ずラベルの記載どおりに使ってください。
疫病
梅雨時の長雨で出ます。葉に水がしみたような暗緑色の斑点ができ、広がって枯れ、芋にも伝染します。風通しをよくすることと、病斑のある葉をすぐ取り除くことが基本。予防にはダコニール1000などの殺菌剤が使われますが、発生してからでは止まりにくい病気です。畑では雨の多い年ほど早めの対応が必要になります。
緑化した芋
日に当たった芋は皮の下が緑色になり、ソラニンやチャコニンという天然毒素が増えます。芽とその根元にも同じ物質が多く含まれます。
農林水産省は、芽とその周辺、光が当たって緑色になった部分にソラニン・チャコニンが多く含まれるとして、芽はまわりごと取り除き、緑色の部分は皮を厚めにむくよう注意を呼びかけています。ゆでても分解しないため、加熱では毒性は減りません。苦みやえぐみを感じたら、一緒に調理した他の食材も含めてそれ以上食べないこととされています。
家庭菜園で採れた小さい芋や緑色の芋は、判断に迷うくらいなら食べないでください。特に子どもは体重あたりの摂取量が大きくなるため、学校菜園などでの食中毒が実際に起きています。
収穫後の保存も、光を当てないことが第一です。段ボールや紙袋に入れ、風通しのよい暗い場所に置きます。
収穫|葉が黄色くなったら晴れた日に掘る
収穫のサインは地上部です。花が終わったあと、葉が黄色くなって茎が倒れ始めたら、芋が太りきったしるし。植え付けからおよそ90〜110日が目安になります。地上部がまだ青々としているうちに掘ると、皮が薄く水っぽい芋になり、保存もききません。
掘る日も選びます。晴れが2〜3日続いて土が乾いているときに掘るのが鉄則です。雨上がりの湿った土で掘ると、芋の表面に土がべったりつき、水分を含んだまま貯蔵することになって腐りやすくなります。
株元から30cmほど離れたところにスコップを入れ、株ごと持ち上げるようにして掘ります。近すぎると芋を割ります。掘り上げた芋は、その場で半日ほど土の上に広げて表面を乾かし、土を落としてから取り込みます。このとき直射日光に長く当てると緑化が始まるので、乾いたら日陰へ移します。
傷のついた芋は先に食べ、無傷のものを保存に回します。よく乾かした芋なら、冷暗所で2〜3か月はもちます。
うまくいかないとき|小さい・少ない・緑になった
収穫でがっかりするパターンは、だいたい決まっています。
小さい芋ばかりだった——芽かきをしなかったか、日照が足りなかったか、収穫が早すぎたかのいずれかです。茎を5本も6本も残すと、養分が分散して全部が小玉になります。ベランダで日当たりが半日以下の場所も、芋が太りきりません。じゃがいもは最低でも半日、できれば1日中日が当たる場所に置いてください。
数が少ない——土寄せ不足か、窒素過多です。芋は種芋より上にできるので、土が薄いとつく場所そのものがありません。また肥料が多いと地上部ばかり茂ります。葉が異様に大きく濃い緑で、花がなかなか咲かない株は、たいてい芋がついていません。
緑色になっていた——これも土寄せ不足です。株元が平らなままだと、芋が地表に近い位置で日に当たります。2回目の土寄せを開花期までに必ず済ませてください。
種芋が腐って芽が出なかった——切り口を乾かさなかったか、植え付け直後に水をやったか、土が過湿だったか。雨が続く時期に植える場合は、切らずに丸ごと植えるほうが安全です。
去年と同じ場所で病気が出た——ナス科の連作障害です。じゃがいものあとにトマトやナス、ピーマンを植えるのも避けます。プランターなら土を入れ替えるのが早い解決になります。
まとめ|種芋と土寄せで決まる、袋でもできる
じゃがいもの出来を左右するのは、検査済みの種芋を使うことと、土寄せを2回きちんとやること。この2つを外さなければ、あとは時期を守って掘るだけです。石灰を入れない、追肥は土寄せと同時に2回まで、掘るのは晴れの日——ここまで押さえれば、初めてでも十分な量が採れます。ベランダしかなくても、培養土の袋ひとつから始められます。
そろえておくと進めやすい道具と資材は、次のとおりです。
- 種いも(ホームセンターや園芸店で、植え付け時期の1か月ほど前から出回ります)
- 野菜用培養土(袋栽培ならそのまま容器になる25L前後のもの)と、追加用にもう1袋
- 化成肥料8-8-8(元肥・追肥の両方に使えます)
- 深型プランター(深さ30cm・容量25L以上)または大きめの布製プランター
- 移植ごてとクワ(土寄せは道具があるとまったく違います)
価格や在庫は時期によって変わります。種いもは植え付け適期を過ぎると店頭から消えるので、2月に入ったら一度のぞいておくといい買い物ができます。
関連記事|連作障害と栽培記録へ
じゃがいものあとに何を植えるか、同じ場所で何年あけるかは、収穫のたびに迷うところです。ナス科をはじめとする科ごとの間隔の取り方は、連作障害と輪作の考え方にまとめてあります。
同じイモ類でも、さつまいもは肥料も水も土寄せも考え方がまるで違います。植え付けから収穫までの日付と数量をそのまま記録したものがさつまいもの栽培記録にあるので、比べて読むと土づくりの違いがわかります。
緑化した芋の扱いと天然毒素については、農林水産省「じゃがいもによる食中毒を予防するために」に詳しい説明があります。判断に迷ったときは、こちらを確認してください。
