種をまいて数日、やっと出てきた芽がもやしのように細長く伸びて、自分の葉の重さで倒れている——これが徒長(とちょう)です。徒長した苗は捨てる必要はなく、野菜の種類を選べば深植えや土寄せでかなり立て直せます。この記事では、徒長の見分け方と4つの原因、トマト・きゅうり・葉もので違う直し方、そして直らないときの見切りの付け方までをまとめます。
徒長とは|光を求めて伸びすぎた状態
徒長とは、茎だけが間延びして細く長く伸びた状態のことです。植物は光が足りないと、まず上へ伸びて光の当たる高さを探そうとします。茎を太らせたり葉を厚くしたりする余力を、伸びることに全部回してしまった結果が、あのひょろひょろの姿です。
困るのは見た目だけではありません。茎が細いので風で折れやすく、組織が柔らかいので病気や害虫の被害も受けやすくなります。定植してから根づくまでに時間がかかり、その分だけ収穫も遅れます。実もの野菜では、一段目の花が咲く位置が高くなって樹ばかり大きくなることもあります。とはいえ、発芽から本葉が数枚までの段階の徒長は、対処すればほとんど追いつきます。慌てて捨てるのがいちばん惜しい選択です。
徒長した苗の見分け方 節の間隔・茎の太さ・葉の色
判断の軸は3つあります。ひとつめは節と節のあいだの長さです。発芽したばかりの苗なら、双葉の下にある軸(胚軸=はいじく。根と双葉をつなぐ茎の部分)が伸びていないかを見ます。ここが2〜3cmを超えて細長く立ち上がっていたら徒長と考えていいでしょう。本葉が出てからは、葉の付け根から次の葉の付け根までが不自然に空いているかどうかが目印になります。
ふたつめは茎の太さです。健康な苗は指でそっと触ると張りがあり、自立します。徒長した苗は頼りなく、手を離すとゆらゆら揺れて戻りません。みっつめは色と厚みです。光が足りない苗は葉が薄く、緑が黄色っぽく淡くなり、葉の面積だけが大きくなる傾向があります。
双葉の下の軸が細長く伸びて、苗が自分で立っていられないなら徒長です。
原因|光不足・高温・水と肥料の入れすぎ・密植
原因の筆頭は光不足です。発芽したあとの苗は、想像よりずっと強い光を欲しがります。室内の窓際は人の目には明るく見えても、苗にとっては薄暗い場所です。発芽したら屋外のよく日の当たる場所に出し、最低でも半日、できれば4〜5時間以上は直射日光に当てたいところです。室内で育てる場合は、窓から離さず、鉢の向きを毎日変えて片側だけが伸びるのを防ぎます。
次に温度です。特に効くのは夜の温度で、昼と夜の温度差が小さく夜も暖かいままだと、苗は夜のあいだに伸び続けます。春先に室内の暖かい部屋へ置いたままにすると、発芽はそろうのに苗が間延びするのはこれが理由です。日中に保温しすぎて苗床が高温になるのも同じ方向に働きます。
3つめは水のやりすぎ。土が常に湿っていると根が水を探して張らず、地上部だけがやわらかく伸びます。水は朝に与え、表土が乾いてから次を与えるのが基本です。夕方以降にたっぷり与えると、夜温と組み合わさって徒長を後押しします。4つめは窒素肥料の入れすぎで、葉と茎を茂らせる成分が多すぎると、やはり伸びる方向に傾きます。育苗用の土にはもともと必要な肥料が入っているので、発芽直後に追肥は要りません。
最後が密植です。同じポットに何本も出た芽は、隣と光を奪い合ってどれも細く伸びます。風通しも悪くなり、茎を鍛える刺激も入りません。
光を足し、夜を涼しくし、水と肥料を控え、間引いて風を通す。徒長対策はこの4点に尽きます。

直し方|野菜別に違う
ここがいちばん間違えやすいところです。ネットでよく見る「徒長したら深植え」は、どの野菜にも当てはまる万能策ではありません。茎から新しい根(不定根)を出せる野菜なら、伸びた茎を土に埋めることで欠点が利点に変わります。一方で茎から根を出しにくい野菜や、接ぎ木苗では、埋めた部分が腐って枯れる方向に働きます。
なお「切り戻し」で立て直せる野菜は限られます。実もの野菜の苗は先端の生長点を切ると再スタートに時間がかかるので、切り戻しは選びません。シソやバジルのように枝分かれして育つものは、本葉が4〜5枚になった段階で先端を摘む(摘芯)と、下の葉の付け根から脇芽が伸びて姿が整います。
トマト・ナスは深植えで立て直す
トマト・ナス・ピーマンなどナス科は、茎を土に埋めるとそこから根を出します。徒長して15cm近く伸びてしまったトマトの苗でも、伸びた分を土の中に入れてしまえば、根の量が増えてむしろ丈夫に育ってくれます。ポット上げ(小さなポットへ移す作業)のときは、双葉が土の上に少し出る深さまで埋めるのが目安です。
定植のときにかなり伸びている場合は、垂直に深く埋めるのではなく、茎を斜めに寝かせて埋める「寝かせ植え」が使えます。浅い層は地温が高く根が動きやすいので、深い穴を掘るより活着が早くなります。
土に入る部分の葉を手で下向きに折り取ります。葉を土に埋めると腐って病気の入口になります。
根鉢が入る穴から横へ、茎の長さに合わせて5cmほどの深さで溝を掘ります。
根鉢を穴に入れ、茎を溝に沿って寝かせます。先端の葉が付いた部分は地上に出し、斜めに起こします。
茎が隠れるまで土を戻し、手のひらで軽く押さえて土と密着させます。強く踏み固めません。
起こした先端の近くに支柱を立て、茎を8の字にゆるく結びます。きつく締めると茎が太れません。
根鉢と新しい土をなじませるため、株元へゆっくり十分に与えます。
寝かせ植えをした茎からは、2週間ほどで白い根が出はじめることが多いです。その間は倒れやすいので、支柱の結び目を時々確認してください。
きゅうり・かぼちゃは深植えしない
きゅうり・かぼちゃ・スイカ・メロンといったウリ科は、茎を埋めても根が出にくく、湿った土に埋まった茎は腐りやすい性質があります。とくに市販のきゅうり苗の多くは接ぎ木苗(病気に強い台木の上に、育てたい品種をつないだ苗)で、茎の途中に接いだ部分があります。
接ぎ目を土に埋めると、上の品種側から直接根が出てしまいます。
病気に強い台木を使っている意味がなくなり、つる割病などを防げなくなります。
ウリ科は根鉢の表面が地面と同じ高さになるよう、浅めに植えます。徒長してしまった場合は、深さで隠すのではなく環境で戻す方向に切り替えます。日当たりのよい場所に出し、水を控えて土を乾き気味に保ち、風が当たるようにします。茎が太るまでは短い支柱を添えて支えてください。背が高くなりすぎた苗は、根元に土を少し足す土寄せで足元を安定させる程度にとどめます。
キャベツやブロッコリーなどアブラナ科は、この中間です。胚軸が伸びた程度であれば、ポット上げのときに双葉の近くまで土を足して立ち上がりを整えられます。ただし生長点(芽の中心)を埋めてしまうと育たないので、中心が土に埋まらない高さで止めます。
葉ものは間引きと光で戻す
小松菜・ほうれん草・レタス・チンゲンサイなどの葉ものは、そもそも植え替えずに育てる野菜です。直し方は間引きと土寄せ、そして光の3点になります。
まず、双葉が開いた段階で混み合ったところを抜き、本葉が1〜2枚になったらもう一度抜いて、株と株のあいだに指1本分の隙間をつくります。抜くときは残す株の根が動かないよう、土を押さえながら引き抜くか、ハサミで地際を切ります。次に、ひょろ長く伸びた株元へ土を足して、倒れないところまで埋めます。葉ものは株元が隠れても問題なく育ちます。
そのうえで置き場所を日なたに変えてください。光が足りている環境に戻れば、以降に出る葉は詰まった節から育ちます。すでに伸びてしまった部分が短くなることはありませんが、そこから上が締まってくれば収穫までは問題なく進みます。シソやネギのような薬味も同じで、間引きと土寄せ、そして日当たりで立て直せます。
直らないときの判断|植え替えるか、まき直すか
全部が助かるわけではありません。見切りをつける基準を先に決めておくと判断が早くなります。
茎の途中が水っぽく透けて、折れ曲がった箇所が茶色くくびれている苗は、苗立枯病(なえたちがれびょう)の可能性があります。これは土の中の菌による病気で、持ち直すことはまずありません。隣へ広がる前に株ごと抜いて処分し、同じ土を使い回さないでください。双葉が落ちて葉が1枚も残っていない苗、先端の芽が傷んでいる苗も、ここから育つ見込みは薄いです。
水っぽく透けた茎、地際の茶色いくびれ、倒れたまま戻らない苗は、病気を疑って早めに処分します。
判断の分かれ目は時期です。種まきの適期にまだ余裕があるなら、まき直したほうが結果は良くなります。“徒長した苗を時間をかけて立て直す”より、”2週間遅れでまき直した健全な苗”のほうが早く収穫に届くことは珍しくありません。逆に適期の終わりが近いなら、多少の徒長は抱えたまま深植えや土寄せで進めます。
市販苗を買い直すという手もあります。トマトやナスを1〜2株だけ育てるなら、育苗の手間と失敗のリスクを考えると、苗を買うほうが確実です。売り場では、節が詰まって茎が太く、葉の緑が濃い株を選びます。つぼみが付いている実もの野菜なら、最初の花が低い位置にある株が当たりです。

予防|育苗の置き場所と水やり
徒長は直すより防ぐほうが簡単です。いちばん効くのは、発芽を確認した瞬間に置き場所を変えることです。種まき直後は発芽適温を保つために室内や保温下に置きますが、芽が土から出たらその環境は光不足の部屋に変わります。発芽を見つけたら、その日のうちに日の当たる屋外へ出してください。夜間に冷える時期は夕方だけ取り込み、朝また出す往復で、昼夜の温度差も自然につきます。
水やりは朝に済ませ、育苗トレイの受け皿に水をためたままにしません。表土が乾いたら与える、を守るだけで茎のしっかり具合が変わります。風も味方です。屋外の自然な風が当たる場所に置くか、室内なら扇風機の弱風を遠くから当てると、茎が刺激を受けて太くなります。手のひらで苗の先を軽く撫でるだけでも効果があります。
種のまき方も関係します。1か所に5〜6粒まとめてまくと、必ず競り合って細くなります。ポットまきなら1か所3粒までにして、双葉が開いたら1本に絞ります。ついもったいなくて間引きを先延ばしにしてしまいますが、残した株が細いまま大きくならないので、ここは早めに決めたほうが得です。
土も見直す価値があります。肥料分の多い培養土で育苗すると、最初から伸びやすくなります。種まきには肥料分を抑えた種まき用土を使い、本葉が2〜3枚になってから培養土へ移すと、ずんぐりした苗になります。
まとめ|光を足し、深植えできる野菜だけ深植えする
徒長した苗を見つけたら、まず置き場所を日なたへ移し、水と肥料を控え、混み合った芽を間引きます。そのうえで、トマト・ナス・ピーマンのナス科は深植えや寝かせ植えで伸びた茎を土に入れ、根を増やす方向に持ち込みます。きゅうり・かぼちゃなどウリ科は接ぎ目を埋めないよう浅植えにして、環境を整えて茎が太るのを待ちます。葉ものは間引きと土寄せで足元を固め、光で先を締めます。
茎が水っぽく透けていたり地際が茶色くくびれていたりする苗は病気を疑って処分し、種まき適期に余裕があるならまき直します。そして次のサイクルでは、発芽したその日に屋外へ出すこと、朝だけ水をやること、3粒まきにすること。この3つで、ひょろひょろの苗はだいぶ減ります。
道具をそろえるなら、種まき用土(肥料分を抑えた育苗専用の土)、セルトレイか3号ポット、苗の自重を支える短い仮支柱と誘引用のひも、そして日当たりの都合で置き場所を動かすための底穴付きトレイがあると、育苗の自由度が上がります。室内で発芽させる場合は、苗を置く棚の高さに合わせた植物育成用のライトも選択肢になります。
関連記事|日当たりと苗の選び方へ
徒長の原因の多くは置き場所の光です。北向きのベランダや建物の影になる区画で何を育てるか迷っているなら、日当たりが悪い場所でも育つ野菜で、必要な日照時間の目安と向く品目をまとめています。
育苗からではなく市販苗で始めるほうが向いている場合もあります。最初にそろえる道具と苗の選び方ははじめての家庭菜園でそろえる道具一式を参考にしてください。
